予防医療を「社会の標準」へ – カナダ・アルバータ州との対話から –
東京大学未来ビジョン研究センター. 2026年9月
9月10日、カナダ・アルバータ州のジャスティン・ライト プライマリケア・予防医療大臣をはじめとする代表団が東京大学を訪問され、予防医療、プライマリケア、データ活用などについて意見交換を行いました。


アルバータ州では2025年の制度改革により、プライマリケアと予防医療を重視し、州民が必要な医療や健康支援にアクセスしやすい仕組みづくりが進められています。
今回は、アルバータ州の取組をご紹介いただくとともに、先方からのご希望で、古井特任教授からは日本で進めてきた「データヘルス」について、アカデミアの視点から紹介しました。
■ データから健康課題を捉え、予防施策を導入し、評価する
日本のデータヘルスでは、データから地域や職場ごとの健康課題を把握し、その課題に応じた予防施策を実施します。
重要なのは、データを分析して終わるのではなく、
健康課題をデータで把握する
→ 解決策を考える
→ 現場に導入する
→ 効果を検証する
→ 次の施策につなげる
という循環をつくることです。
私たちがこれまで国保や健保・共済組合の皆さんと進めてきた取組や、そこから得られたエビデンスと現場の実践知を、どのように次の政策や保健事業につなげてきたのかについて報告しました。
加えて、企業における健康経営の取組に関しても紹介し、職場は働き盛り世代の予防医療を支える重要な場であることを共有しました。
■ 同じ予防医療でも、社会が違えば実装のあり方も変わる
意見交換で印象に残ったのは、州のプライマリケアと予防医療施策を担うPrimary Care Albertaのキム・シモンズCEO(疫学博士)との、制度設計と実装に関する議論です。
シモンズ博士は、予防医療の仕組みを考える際には、その地域の社会的背景を踏まえることが重要だとして、社会環境の違いの例に、日本では犯罪率の低さ、アルバータ州では人種や文化的背景の多様性を挙げました。
国際比較では、制度やサービスばかりに目が向きがちですが、同じ予防医療の仕組みであっても、その国や地域の社会環境、住民構成、文化によって、現場への取り入れ方は異なります。
だからこそ、エビデンスや実践知をそのまま持ち込むのではなく、
どのような対象に/どのような環境で/どのような方法を実装すると/どのような成果につながるのか
を検証していくことが重要です。
ここでいう「実装」とは、現場で実際に機能する形で取り入れていくことです。
これは、日本国内での横展開を進める上でも大切な視点だと改めて感じました。
■ 「良い取組」から「社会の標準」へ
アルバータ州では、Primary Care Albertaを中心に、プライマリケアや予防医療の強化、医療アクセスの向上が進められています。
例えば、Health Link 811では、州民が健康上の相談を行い、必要に応じて適切な医療やサービスにつながる仕組みが整備されています。
制度や社会背景は日本とは異なりますが、
「健康課題を早期に捉え、必要な予防や支援プログラムにつなぎ、その成果を評価する」
という方向性には、日本のデータヘルスとの共通点があります。
今回の対話を通じて、これからの予防医療では、優れた取組をつくるだけでなく、
「効果のある取組を一部の地域や職場だけのものにせず、より多くの現場で当たり前に取り入れられる仕組みにしていく」
ことが重要だという認識を共有しました。
ライト大臣からは、今後もシモンズ博士を中心に、継続して情報交換していくことをご提案いただきました。
日本とアルバータ州、それぞれの制度や社会背景の違いも含めて比較しながら、データと現場の実践知を活かし、予防医療を「一部の良い取組」から「社会の標準」にしていくために、さらに議論を深めていきたいと思います。

アルバータ州代表団の皆さんと東京大学伊藤国際学術研究センターにて

プライマリケア、予防医療、データ活用について意見交換
アルバータ州では2025年の制度改革により、プライマリケアと予防医療を重視し、州民が必要な医療や健康支援にアクセスしやすい仕組みづくりが進められています。
今回は、アルバータ州の取組をご紹介いただくとともに、先方からのご希望で、古井特任教授からは日本で進めてきた「データヘルス」について、アカデミアの視点から紹介しました。
■ データから健康課題を捉え、予防施策を導入し、評価する
日本のデータヘルスでは、データから地域や職場ごとの健康課題を把握し、その課題に応じた予防施策を実施します。
重要なのは、データを分析して終わるのではなく、
健康課題をデータで把握する
→ 解決策を考える
→ 現場に導入する
→ 効果を検証する
→ 次の施策につなげる
という循環をつくることです。
私たちがこれまで国保や健保・共済組合の皆さんと進めてきた取組や、そこから得られたエビデンスと現場の実践知を、どのように次の政策や保健事業につなげてきたのかについて報告しました。
加えて、企業における健康経営の取組に関しても紹介し、職場は働き盛り世代の予防医療を支える重要な場であることを共有しました。
■ 同じ予防医療でも、社会が違えば実装のあり方も変わる
意見交換で印象に残ったのは、州のプライマリケアと予防医療施策を担うPrimary Care Albertaのキム・シモンズCEO(疫学博士)との、制度設計と実装に関する議論です。
シモンズ博士は、予防医療の仕組みを考える際には、その地域の社会的背景を踏まえることが重要だとして、社会環境の違いの例に、日本では犯罪率の低さ、アルバータ州では人種や文化的背景の多様性を挙げました。
国際比較では、制度やサービスばかりに目が向きがちですが、同じ予防医療の仕組みであっても、その国や地域の社会環境、住民構成、文化によって、現場への取り入れ方は異なります。
だからこそ、エビデンスや実践知をそのまま持ち込むのではなく、
どのような対象に/どのような環境で/どのような方法を実装すると/どのような成果につながるのか
を検証していくことが重要です。
ここでいう「実装」とは、現場で実際に機能する形で取り入れていくことです。
これは、日本国内での横展開を進める上でも大切な視点だと改めて感じました。
■ 「良い取組」から「社会の標準」へ
アルバータ州では、Primary Care Albertaを中心に、プライマリケアや予防医療の強化、医療アクセスの向上が進められています。
例えば、Health Link 811では、州民が健康上の相談を行い、必要に応じて適切な医療やサービスにつながる仕組みが整備されています。
制度や社会背景は日本とは異なりますが、
「健康課題を早期に捉え、必要な予防や支援プログラムにつなぎ、その成果を評価する」
という方向性には、日本のデータヘルスとの共通点があります。
今回の対話を通じて、これからの予防医療では、優れた取組をつくるだけでなく、
「効果のある取組を一部の地域や職場だけのものにせず、より多くの現場で当たり前に取り入れられる仕組みにしていく」
ことが重要だという認識を共有しました。
ライト大臣からは、今後もシモンズ博士を中心に、継続して情報交換していくことをご提案いただきました。
日本とアルバータ州、それぞれの制度や社会背景の違いも含めて比較しながら、データと現場の実践知を活かし、予防医療を「一部の良い取組」から「社会の標準」にしていくために、さらに議論を深めていきたいと思います。

