社員の健康と労働生産性の損失との関連.
古井祐司, 村松賢治, 井出博生.
中小企業における労働生産性の損失とその影響要因.
日本労働研究雑誌. 2018;60(6):49-61.

この研究では、労働生産性の損失とその要因の構造を明らかにしました。具体的には、横浜市との連携のもと、市内の中小企業6社・178名を対象に無記名自記式のアンケート調査を実施しました。その有効回答(n=162)について健康リスク評価9項目のリスク該当数をもとに、低リスク群、中リスク群、高リスク群の3群に分けました。その結果、高リスク群のアブセンティーイズム とプレゼンティーイズム の平均値は、低リスク群、中リスク群と比較して有意に大きいことが分かりました。コスト換算した場合、1人あたりの年間のプレゼンティーイズムコストは、アブセンティーイズムコストと比べて20倍大きく、高リスク群のプレゼンティーイズムコスト(159.4万円)は低リスク群(56.4万円)と比較して2.8倍大きいことがわかりました。中小企業ではアブセンティーイズムや疾病の発症を防ぐことを目的とした、主に健診結果等で捉えられるようなハイリスク者に対する介入だけでなく、プレゼンティーイズムを抑えるための職場全体を意識した取組が重要であることが明らかになりました。

アブセンティーイズム:心身の体調不良による欠勤(単位:日数)。
プレゼンティーイズム:何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力の低下による生産性の損失割合(単位:%)。

PDFで詳細を見る