シンポジウム 企業の持続的な発展に資する人的資本への投資
– 健康経営の更なる進化を目指して –
(2026年9月1日開催)

2026年9月1日(火)、東京大学未来ビジョン研究センターとアクサ生命保険株式会社は、シンポジウム「企業の持続的な発展に資する人的資本への投資 – 健康経営の更なる進化を目指して –」を開催しました。
シンポジウムはオンライン配信にて、企業を中心に約160名の皆様が参加されました。

来賓挨拶

開会にあたり、全国健康保険協会東京支部長の柴田潤一郎氏よりご挨拶をいただきました。柴田氏は人的資本投資や健康経営の効果検証に対する企業の高い関心に触れ、本シンポジウムで発表される新指標「ウェルビーイングスコア」への期待を寄せられました。また、健康経営は企業規模や業種に応じた実践が重要であり自社のできることから進めることが持続可能な発展に繋がると強調されました。さらに、同支部が展開する健康経営の認定制度やサポート体制を紹介し、企業における保険者の積極的な活用を呼びかけられました。

対談 – 企業の人的資本「人の価値」を高める日本社会の構築

東京大学 古井祐司特任教授とアクサ生命 取締役 常務執行役員兼チーフディストリビューションオフィサーの池西桂氏とによる対談では、健康経営の現状と今後の更なる発展に向けたポイントが議論されました。
この10年で健康経営の普及が進み、社員の健康への配慮は社会標準となりました。現在は単なる疾患予防にとどまらず、健康を基盤に社員が生き生きと働き、企業の生産性や価値を高める「人的資本経営」の土台へと意識が変化しています。
今後、健康経営を進化させる鍵として以下の3つの発想転換が挙げられました。

  • ・健康づくりから「人づくり」へ:単なる健康保持を超え、働きがいを持って能力を発揮・成長できる状態を目指す。
  • ・企業目線から「従業員目線」へ:経営者の視点だけでなく、現場の困りごとや従業員の望む働き方を把握し寄り添う。
  • ・感覚から「データ」へ:ウェルビーイングスコアなどを活用して取り組みの効果を可視化し、PDCAサイクルを回す。

健康経営は「普及」から「成果」を求めるフェーズへと入っています。今後はデータに基づく客観的な対話や、地域の健康経営アドバイザー等による中小企業への伴走支援を通じ、働く人の価値向上と企業の持続的成長を両立させることが求められています。

研究報告 – 企業の人的資本の可視化『ウェルビーイングスコア』の研究開発と社会実装

アクサ生命保険 HPM事業開発部 シニアビジネスディベロップメントエキスパートおよび東京大学客員研究員の村松賢治氏による研究報告では、経営者の「健康経営に取り組んで会社は良くなったのか」という問いに対し、企業の人的資本を定量評価する「ウェルビーイングスコア」の研究開発と社会実装の成果が示されました。

【概要と特徴】

本スコアは、健康経営(人的資本投資)による従業員の意識・行動変化や企業発展を100点満点で可視化する指標です。労働生産性の向上と関連するように設計されており、「健康風土」「生活習慣」「心身の健康」「働きやすさ」「働きがい」「仕事の充実」「人生観」「生きがい」の8つの領域に分解して評価することで、次の一手(改善施策)を検討できます。

【主な研究成果】

大規模なデータ分析(約9,000社等)により、ウェルビーイングスコアと以下の項目との相関が実証されました。

  • ・労働生産性の向上:高スコア企業(70点以上)は低スコア企業(50点未満)に比べ労働生産性が12%高く、特に「働きがい」や「生きがい」「健康風土」などの要素が大きく寄与しています。
  • ・人材定着と業績拡大:ウェルビーイングスコアが高い企業ほど従業員の増加率(採用・定着率)が高く、従業員1人当たりの売上高も高い傾向にあります。
  • ・健康経営優良法人認定の取得:健康経営優良法人(ブライト500等)の上位認定を取得している企業ほどウェルビーイングスコアが高く、特に健康風土や働きやすさの評価が高いことがわかりました。

【今後の展望】

今後は、ウェルビーイングの向上につながる実践ポイントの解明や中長期的な経営指標への影響分析を進め、従業員のウェルビーイング向上、企業の持続的発展、地域社会の活性化に貢献していく方針です。

パネルディスカッション – 働く人々のウェルビーイングの向上から実現する「企業の持続的な発展」

パネルディスカッションでは、東京大学の井出博生客員教授をモデレーターに、行政・企業・支援機関の各立場から健康経営の取り組みと成果について議論が行われました。
経済産業省ヘルスケア産業課 課長補佐の河裾淳子氏は、少子高齢化に伴う深刻な労働力不足や健康課題による経済損失を背景に「健康経営」が推進されており、特に中小企業において離職率低減などの成果が見られることから、補助金加点や優遇金利の適用拡大、地域でのサポート体制の拡充を進めていることを挙げました。
ブライト500の認定を受けた株式会社スキルドシール代表取締役の松澤忠大氏と管理本部の吉田由佳氏は、職人の健康を守る理念のもと、長年実施してきた昼食弁当の無償提供や社内イベントといった既存の取り組みを整理・可視化して認定取得に至った経緯を発表しました。日常的なコミュニケーションによる信頼関係が、現場での体調や安全の相談しやすさにつながり、企業経営の基盤になっていると述べました。また、健康経営は特別なイベントではなく、日々の取り組みの積み重ねが大切だと強調しました。そのうえで、ウェルビーイングスコアのような指標があることで、企業が続けてきた取り組みに自信を持てると述べ、スコアの有用性にも言及しました。
アクサ生命保険株式会社東京支社町田営業所 採用育成マネージャーの金子涼子氏は、町田商工会議所と連携して地域企業の健康経営を伴走支援する事例を紹介し、単なる健康管理にとどまらず、従業員が心身ともに生き生きと働けるウェルビーイング向上と企業発展の両立を目指す姿勢を示しました。
議論を通じて、人的資本への投資やウェルビーイングの向上は個社の持続的発展にとどまらず、地域社会全体の活性化にも深く寄与することが確認されました。